技術コラム(第15回) スイッチングレギュレータについて

今回は、技術コラム(第12回)の中で紹介した「組み込み機器によく利用されるスイッチングレギュレータ」について、その特徴などを説明します。

スイッチングレギュレータとは

以前のコラムでも説明しましたが、スイッチングレギュレータとは、フィードバック回路によりスイッチ素子のオン・オフ時間を制御することにより定電圧を出力する電源レギュレータです。
また、入力電圧と出力電圧の関係から

  • 降圧型スイッチングレギュレータ
  • 昇圧型スイッチングレギュレータ
  • 昇降圧型スイッチングレギュレータ

の3つのタイプに分解することができると説明しましたが、これらの特徴は、組み込み機器の入出力の電圧により自ずとどのタイプのものを使用するか決まりますので、今回はこれらの全てのスイッチングレギュレータに共通する特徴を説明します。

効率

入力した電力(電圧×電流)がそのまま出力した電力として変換されることが理想なのですが、実際にはスイッチングレギュレータ自身にての電力ロスがあるため、そのようにはなりません(100%の変換効率にはなりません)。
そのため、できる限り効率の良いデバイスを選定することとなるのですが、同じデバイスであっても、入力する電圧や消費する電流によっても効率が変わります。よって、その組み込み機器に最も適したデバイスを選定することになります。
この辺りがどのデバイスを選定するかの一つの基準となります。

出力電圧

出力電圧については、固定の電圧を出力するタイプと、外付けの抵抗などにより可変の電圧を出力するタイプと2種類のタイプのものがあります。
前者は後者の外付け部分をデバイスに内蔵しており、その分小さい面積で実装できるので組み込み機器の小型化に有利になります。後者は、抵抗をのせるなど簡単な対応で、製造済み基板の出力電圧変更が可能です。
しかし、このような状況は特殊なことといえますので、基本的には固定電圧出力タイプのものを使用した方が部品数を少なくできるため、実装面積的にも部品コスト的にも良いといえます。

出力電流

出力電流については、各デバイスにて最大電流が決まっています。なので、組み込み機器にて何A消費するのかを算出し、その消費電流に見合ったデバイスを選定することになります。
一般的には、大電流を流せるデバイスほど、パッケージが大きくなる傾向にありますので、実装面積に余裕がある場合は、流せる電流に余裕があるデバイスを選定しても良いですが、あまり余裕がない場合は、消費する電流を許容でき尚且つ実装面積が小さいデバイスを選定する必要があります。
この辺りは、組み込み機器全体を考慮して最適なデバイスを選定することになります。

スイッチングによる電気的ノイズ

スイッチングレギュレータのスイッチングとは、フィードバック回路によるスイッチ素子のオン・オフ制御のことを指します。
このオン・オフ時間(= 周波数)は各デバイスによって固有となっているのですが、スイッチングすることにより、この固有の周波数の電気的ノイズを発生させます。
この電気的ノイズは、組み込み機器に搭載される各種センサーなどのA/D変換精度や無線モジュールの通信品質(通信距離や通信成功率)に悪影響を及ぼすため、可能な限り抑えるためにノイズ対策部品を実装すると共に、なるべく悪影響を及ぼさないような周波数を選定することが重要となります。

以下にスイッチングレギュレータ出力のノイズ波形を記録します。
左側の波形はノイズ対策を施していない場合、右側の波形はノイズ対策として出力にコンデンサを付加した場合の波形です。                                

電源ノイズ波形(ノイズ大)
電源ノイズ波形(ノイズ大) 

電源ノイズ波形(ノイズ低減)
電源ノイズ波形(ノイズ低減)

まとめ

今回はスイッチングレギュレータについてまとめました。
最近では小型で大電流を流せるものなど、色々良いものが出ています。
組込開発.comではこれらのスイッチングレギュレータを組み込んだ回路の開発実績も多数ありますので、スイッチングレギュレータを利用した組み込み機器を作りたいなど何か電源系についてお困りのことがありましたら、お気軽にお問い合わせ頂ければと思います。

投稿者プロフィール

ソフト担当T
ソフト担当T
メインはソフト担当ですが、筐体設計も担当します。プログラミング言語はPythonやC言語の経験が多いです。また、たいチャレ(詳細は右バーナー参照)にも参加しており、日々、様々なことを学びながら業務に取り組んでいます。