技術コラム(第12回) バッテリ駆動の携帯型端末に使用する電源レギュレータ
組込開発.comはこれまで様々な開発に携わってきましたが、最近よくあるご依頼がバッテリ駆動による携帯型端末の開発です。
以前、「バッテリ駆動の携帯型端末に使用するCPU」というコラムを掲載しましたが、今回はその続きとして「バッテリ駆動の携帯型端末に使用する電源レギュレータ」のコラムを掲載します。
通常、システムが要求する電圧は、ある一定範囲内の電圧が求められますが、電圧を一定範囲内に安定させるために電源レギュレータが使用されます。特にバッテリ駆動による携帯型端末に使用する電源レギュレータを選択する際には、「バッテリ駆動時間を長くする」ことや「実装面積をできるだけ小さくする」などを考慮する必要があります。
電源レギュレータとは
電源レギュレータとは、ある入力電圧から一定の電圧を出力する部品(回路)のことをいいます。
バッテリ駆動による携帯型端末に使用する電源レギュレータとして、大きく分けると以下の2つのタイプがあります。
- リニアレギュレータ
- スイッチングレギュレータ
ハードウェア開発では必要に応じてこれらを使い分けします。
次章ではこれらの電源レギュレータについて説明します。
リニアレギュレータ
リニアレギュレータとは、入力電圧を降圧させ出力する電源レギュレータです。出力される電圧は固定のものから、外部抵抗などにより可変できるものがあります。
入力電圧を降圧させる際の電圧差は熱などのエネルギーとしてレギュレータ自身が消費するため、その分がエネルギーロスとなります。
この点からいうと、バッテリという限られたエネルギーでのロスは駆動時間の減少に繋がるため、あまりお勧めは出来ません。しかし、単純な構造で周辺の部品が少なく済む(回路面積が小さくて済む)といった利点があり、また総じて回路全体を安価に抑えられるということがいえます。
もちろん、組込開発.comの開発実績の中には、このリニアレギュレータを利用した案件もございます。
スイッチングレギュレータ
スイッチングレギュレータとは、フィードバック回路によりスイッチ素子のオン・オフ時間を制御することにより定電圧を出力する電源レギュレータです。
前述のリニアレギュレータと比べると回路自身のエネルギーロスが少ないため、その点ではバッテリ駆動の端末には適していると言えます。
しかし、リニアレギュレータと比べると、総じてインダクタやダイオードなどの周辺の部品が多くなることもあり、電源回路の小型化が難しい、回路の価格が高くなるというデメリットがあります。但し、最近では、これら周辺部品の一部を内蔵したスイッチングレギュレータというものも出てきており、以前と比べると小型化が期待できます。
また、スイッチングレギュレータは、入力電圧と出力電圧の関係から以下の3つのタイプに分類することができます。
降圧型スイッチングレギュレータ
入力電圧より低い電圧を出力するタイプのレギュレータです。
乾電池3本直列接続(4.5V)から3Vの出力を得る場合などに使用します。
昇圧型スイッチングレギュレータ
入力電圧より高い電圧を出力するタイプのレギュレータです。
乾電池1本(1.5V)から3Vの出力を得る場合などに使用します。
昇降圧型スイッチングレギュレータ
入力電圧より低い電圧を出力(降圧型)する場合と、高い電圧を出力(昇圧型)する場合の両方を兼ね備えたレギュレータです。
リチウムイオン二次電池(2.7V~4.2V程度の範囲)から3Vの出力を得る場合などに使用します。
これらは、入力電圧がどの範囲にあるかによって、それぞれ適したタイプのものを選択することになります。
また、スイッチングレギュレータ自身によるロス(効率)も消費する電流によって変わるため、スイッチングレギュレータを選択する際のひとつの要因となります。組込開発.comではハードウェア開発の実績もあり、スイッチングレギュレータの選定も可能です。
まとめ
今回はバッテリ駆動の携帯型端末に使用する電源レギュレータについてまとめました。
バッテリ駆動時間を最大限に延ばすという意味では、バッテリからシステムを直接駆動するような構成が最適と言えるのですが、安定した電圧をシステムに供給する必要がある場合には、今回説明したような電源レギュレータが必要となります。
組込開発.comではこれら電源レギュレータを組み込んだ回路の開発実績も多数あり、バッテリ駆動(低消費電力)に適した回路を得意としていますので、効率の良い電源システムを組み込みたいなど何か電源系についてお困りのことがありましたら、お気軽にお問い合わせ頂ければと思います。
投稿者プロフィール
- メインはソフト担当ですが、筐体設計も担当します。プログラミング言語はPythonやC言語の経験が多いです。また、たいチャレ(詳細は右バーナー参照)にも参加しており、日々、様々なことを学びながら業務に取り組んでいます。
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