山で命を救うIoT!GPSで位置を知らせるバルーン

もうすぐ夏ですが昨今の状況では外出も中々出来ないですね。そんな中でも”密”になりにくい山などに出かける方も多いのではないでしょうか。
自宅から目的地の山まで自家用車で出かければ他人と同じ空間で過ごす事も殆ど有りませんからね。ただ、密を避ければ避けるほど山中で道に迷ったり滑落したりした場合、発見が遅れてしまいます。チョット深い山では携帯電話は通じませんし、山歩きの為にアマチュア無線の免許を取って無線機を携行している方もそんなに多くないでしょうから、救助を要請する手段を何か考えないといけません。今回はそんな時に役立つ装置を考えてみたいと思います。

山の中での通信手段と言うと、やはり「無線」になると思います。無線はその特性上、
・送信電力が大きいと遠くまで届く
・周波数が低いと遠くまで届く
と、言う特徴を持っています。残念ながら携帯電話は世代を重ねるに連れて高速、大容量通信や混信の軽減などの為に周波数はどんどん高く、電力は小さくなってきており、先に示した条件に逆行しており、山中では使えません。よって、携帯電話以外の手段で使えそうな無線を探します。
最近ではLPWA(Low Power Wide Area)と言われる無線が多く出てきています。LPWAと言う単語自体は特定の種類の無線を指すものでは有りませんが日本では920MHz帯の周波数を使った物が多く有ります。LPWAの送信電力は小さいのですが色々な工夫を行い、長距離の通信が可能になっています。また、送信電力が小さい分、電池寿命も長く出来ますのでこれを使った救助用装置を考えます。

山岳救助装置外観
山岳救助装置外観

左の絵が救助装置のイメージ図になります。無線は見通しが効く方が届きやすいので装置本体はヘリウムガス入りのバルーンに吊り下げて上空に浮かせます。また、バルーンを上げる事により、ヘリコプターなどでの捜索の際に目印となります。
本体には
・GPSの受信装置
・LPWA無線機
・夜間にバルーンを照らすLED照明
・明るさを検知する光センサ
・制御装置
・各電子装置を動かす為の電池
が、装備されています。

捜索者の視点から見ると、以下の様になります。

捜索者の視点
捜索者から見た救助装置

バルーンに救助装置を取り付ける事により、少しでも無線通信が可能な距離を伸ばすと共に捜索者から発見しやすくする効果もあります。バルーンも上半分は森林の緑の中でも見やすいオレンジ系を、下半分は夜間に照明を点けた時に発見しやすい白を選択しています。冬山や主として岩場などに出かける際はオレンジ系よりも良い色が有ると思いますので、色は選べると良いかも知れませんね。

さて、この装置の内部構成は以下の図の様になっています。

救助装置の内部構成
救助装置の内部構成

装置を起動すると、GPS受信機が現在位置を取得し、装置の識別番号と共にLPWA無線を通じて送信します。この救助信号を近くの山小屋等に設置してある受信機で受信した場合、捜索隊が出動してGPSの位置情報を基に捜索します。現場付近に到着したら、最終的にはバルーンを目印に遭難者の救助を行います。夜間の場合はバルーンを目視する事が難しいので、光センサで周囲が暗い事を検知した場合は救助装置本体に取り付けたLED照明を点滅させ、捜索隊の目印とします。

救助装置の収納状態
救助装置の収納状態

左の絵が収納状態での救助装置です。外箱には無線装置を積んだ本体以外、起動ボタン、バルーンを膨らませる為のヘリウムボンベ、畳んだ状態でのバルーン、バルーンが何処かに飛んで行ってしまわない為の凧糸等が入っています。凧糸の長さは、無線通信の事だけを考えると長ければ長い方が有利になりますが、凧糸自身にも質量があり、余り長いとバルーンが上空に上がらなくなってしまいます。しかし、少なくとも周囲にある樹木よりは高く上がって欲しいので20m程度は必要でしょうか。
ボンベが小型なため、ボンベごと打ち上げる程の浮力は得られないのでバルーンを膨らませたのちにボンベを切り離す等の作業は人手で行う必要が有りますが、山中での捜索の手掛かりとしては有効な手段だと考えます。

さて、いかがでしたでしょうか。将来的には転落・転倒などを検知した際に全自動でバルーンの膨張・ボンベの切り離し~打ち上げまでが出来るようになると便利だと思います。
組込開発.comでは過去に様々な提案・開発を行っています。開発実績の方も是非ご覧になって下さい。

投稿者プロフィール

ハード担当M
ハード担当M
昭和の時代からハード開発を行ってます。分野的には無線を使ったポータブル機器です。昔はバラ部品から無線機を組み上げていましたが、今はIC一個で全て終わる時代になりました。性能はソコソコですが便利な時代になりました。